|
鍵盤を叩きに叩く人種がいる。こういう手合いの音楽を聴いていると、録音ならともかく実演だと肉体的に辛くなってくる。音の塊を次々ぶつけられて頭痛がはじまり、抜けが悪いために空間に留まり続ける、鬱陶しい湿度にも似た音の分厚さに比喩ではなく息苦しくなる。幼いころ風邪をひいた時、口の中に綿を詰められているような感覚に襲われることがよくあり、今でも体が重いときにこの感覚が時に蘇ることがあるが、こういう演奏を聴くと、そのざらざらとした口中の感覚が再現して難渋する。従って、早く終われ、早く終われ〜〜、と念じることになる。
先日聴いたピアニストによる協奏曲、まさにこの典型例だった。こういうタイプですぐに思い出すのが、夭逝してしまったスルタノフ。彼のライヴは数度聴いたが、ピアノの弦を叩き切る豪快な打鍵は全く爽快とは逆ベクトルにあり、いずれもそういった息苦しさを覚えさせるものだった。個人的にはそういった生理的な相性の悪さがあるため、あまり評価していない演奏家なのだけれど、しかし彼の場合、それだけでは済まないものもあったのは事実。結局最後の来日になった公演で披露したリストのソナタは、こりゃ10年後の演奏は面白いかもな、と思わせた。 だが今回聴いた奴にそんな感情は一欠片も湧いてこないんだよなあ。7年ほど前のリサイタルでもアンコール始まる前に席を立ったのだけれど、今回も余りに食傷して前半で退散。いや、いろいろな人がおるものであります。 |
|
先週のはじめ、GWを避けて竹橋で藤田嗣治展を見てきた。それでもすごい混雑っぷりに少々怯んだけれど、猫大好き人間にはたまらん画家の一人、おまけに展覧会なんか滅多にないのだから突撃せぬわけにはいかない。とてもよかったけれど、座るところがあまりなく、人いきれにまみれて実に疲れた。彼の最後の大仕事であるランスの礼拝堂、ノートルダム・ド・ラ・ペは、クローヴィス以来歴代フランス王の戴冠聖堂となり、シャガールのステンドグラスがあり、そしてまた藤田も洗礼を受けたランス大聖堂と合わせ、10年ほど前に訪れたことがある。03年、この礼拝堂の地下に藤田の亡骸が移されたらしい。
ところで今回圧倒的な感銘を受けたのは、ライトの当て方がマズくてよく見えない部分もあったけれど戦争画。実物を初めて見たけれど、アッツ島玉砕など途轍もない迫力。サイパンなんか、戦意昂揚にはてんで役立たないだろうな、という凄惨極まりなき映像。戦争画家としての活躍ぶりが後に糾弾される原因となったのだけれど、個人的にはジェリコーのメデューズ号をナマで見たときと同じような感銘を受けた。 この催しのあと、そういや彼の人生ほとんど知らないな、ということで伝記とエッセイの関連書物を片っ端から図書館で借り出し、まずはNHKのディレクターが書いた伝記「藤田嗣治・異邦人の生涯」(近藤史人著、講談社)を読んでみた。この本、生涯を手頃にたどれる本としてお手頃なのだけれど、問題もある。まだご存命の藤田未亡人君代氏(4人目の妻)の証言と、この著者とは違う筆者の手になる未刊の評伝草稿を送られた藤田が事実関係に正確を期すべく加筆して送り返した文章とが背骨であるため、専ら藤田サイドからの叙述に終始する。そういう意味では扁平的な人物造形になってしまう、伝記作者がよく犯す過ちをなぞっている箇所があるけれど、これは特殊事情を勘案せにゃならんだろうな。なんせこの君代さんという狷介な人物が抱く日本への抜きがたい怨嗟、それが巻き起こしてきた著作権問題は根深いものがあるらしく、昨年発売された光文社新書「20世紀絵画・モダニスム美術史を問い直す」(宮下誠著)刊行時にも問題を巻き起こした。その当時、まだ藤田を巡る問題には暗かったので、なんだこれ、という感もあったのだが、これを読んで、なるへそ、そういうことだったのかと得心がいった。脇道に逸れたが、この本の最大の難点は、大きな文化史的視点が欠けていること。特に戦争画に関するくだりで展開される擁護は戦中・戦後の美術評論家による弾劾に淡々と反論する形で進むのみに終始する。伝記作者ならば一番の腕の見せ所だと思うのだが、切り込みが甘く実に退屈だ。引用の技法も稚拙で、かなり気になる。 そういう欠点はあれど、1冊目にはえがったかな、という本、ですなあ。一番面白かったのは、乳白色の肌の秘密は3層に塗られたキャンバスにあり、というくだり。その後録画しておいたNHK教育の日曜美術館で映像で確認出来たのもよかった。箱根ポーラなんかには赤外線で下絵を見せる工夫があったけれど、この展覧会でもキャンバス並べてもよかったかもねえ。学芸員や研究者の探求の一端をも知らしめる展示方法は、巡回展ではやりにくいのだろうか? それともやはりあのお人の認可が下りないのか?? |
|
昨日はDanchu4月号の餃子特集を読んで以来気になっていた手作り餃子を作ったが、1回目は派手に焼きに失敗してしまった。。。ウチのはテフロンではないしなあ、ということでよく熱して焼いた2度目は成功。皮はなかなか上手く出来たけれど、餡はコクが足らず、少々改良の余地アリ。やはり良質のラード、ないしは豚骨+鶏ガラスープで作るゼラチンが必須と見た。
ところでツィメルマンの公演内容が最近発表され、そのなかにバツェヴィチがある、というのはSt.Ivesさんのところなどで知っていたので、最近エヴァ・クピエク(クピーク)のヘンスラー盤(CD93.034)を何度か聞き返していたんだけれど、捨てる前に目を通した武蔵野市民文化会館のパンフ裏面で、自分の買ったここの公演、バツェヴィチではなくショパンのバラ4と第2ソナタで組まれた別プロであることを今更知る。ぐわー。大方の聴き手はショパンの方がウェルカムなんだろうけど。 ちなみにこのソナタには、他ならぬツィメ自身による録音がある。Web上のディスコによれば77年のライヴ録音だそうで、これはずっと捜している盤なのだ。そもそもはポーランドMuzaから出たものだから、ヤブロンスキーのaltaraあたりでの再発に期待したいところだけれど、、、相手が存命の完璧主義者じゃあ無理かな。 |
|
文句のつけようはあろうが、ベートーヴェンを除いて大きな不満はなく、随分前から聴いている自分からすると、よくここまで化けたなあ、という実感の方が強い。これからのルガンスキーは面白そうだ。
アンコールは5曲。 ショパン 3つの新エチュード第1番 エチュードop.10-8 ラフマニノフ リラの花 リスト ラ・カンパネラ バッハ/ヘス 主よ、人の望みの喜びよ なぜここでリスト、それもこの曲なのかは、個人的には大きな疑問符だけど、まあいいとしよう。人気が出てチケットが万札を超えないことを祈るばかり(苦笑) |
|
なんと4ヶ月以上ぶりの更新か。。。更新が滞っていたのは、同業者による、恐らくは少々の営業活動を兼ねて書いているblogの数々に大いに食傷してしまったのがデカい。裏でお手々つないでること丸わかりなのに、そこでクライアントの商品を持ち上げても白けるだけだと思うんだけれど。このくらいまではいいとして、仕事のミスをblog で訂正するなんてのはもっての他だし、仕事や個人的付き合いによって知り得た裏話も、酒席なぞのプライヴェートな場でならともかく、あまりおおっぴらにしてよいものではないと思う。この業界には守秘義務って概念はあまりないのかね。
とはいえ日記風に書けばそういうネタに当然接近せざるを得ない。どうするかなあ、とずっと考えていた、、、わけではなく、ズルズル休んでいただけなんだけれど(苦笑)。しかしまあ無責任なテクストを貼れる場所はそうあるわけでもないし、自分を特定できる人もあまりおるまいよ、と気を取り直し、とりあえず不定期更新で勝手なテクストを貼り付ける場所、として再開。なんら問題は解決していないままなので、また頓挫する可能性は大きいけど、とりあえず演奏会のアンコールメモくらいはつけようか、というか。 というわけで5/6に閉幕したラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンLFJJに、今年も行って来ました。去年は当日でもチケはかなり買うことが出来たのに、今年は売り切れ多数。結局予めチケ持っていたもの以外では、マフチン、ベレゾフスキー、クニャーゼフのピアノトリオで22:45-23:30という1公演のみゲット。 この催しへの讃辞はあちこちで腐るほど出ており、自分もそういう意見に概ね賛成なのだけど、一つケチをつけておきたいことがある。それは特設ショップ。ここで売ってるディスクの値段は、釣り銭の用意が大変だからかもしれないけれど、なべてキリのよい、しかもかなりの高値に設定されていた。タワーのwebショップではGW特価2200円程度で売られていたMirare盤3000円という値付け見て、殺意を覚えぬディスクマニアはおりますまい(苦笑)。10枚組2500円という破格ボックスは超GJだっただけに、いらんところで失点するなよ、というか。 ついでにディスクの品揃えに関して言うと、去年の石丸に比べれば、今年のタワーのブースは比較を絶する貧弱さで、ディスク漁りの喜びは一欠片たりとも与えてはくれませんでしたね。個人的にはカムバック石丸。無理だろうけど。。。 グッズも一通り見て回ったけれど、これは02年、今年の本家、それに去年の日本の残り物寄せ集めだな、という印象(今年の本家は、日本と違ってバロック音楽、モーツァルトは95,02年の特集)。それはしゃーないとしても、楽譜がプリントされたクリアファイルなんかを眺めていると、モーツァルトじゃない、たとえばバッハの無伴奏なぞが紛れ込んでいるのに、その旨明記されていないことも多い。買って後でそのことを知ったら、嫌な気分するんじゃないかなあ。 そんなこんなで終わったLFJJ、来年は本家L’harmonie des peuplesと同じで、主に国民楽派を取り上げるとか。ぶっちゃけ来年のが遙かに面白そうな予感がするので期待大。 |
|
| blog note |
|
